国民年金、38年前の誤算

こんにちわ。FPの金蔵(きんぞう)です。
現役サラリーマンの年金加入者の皆さんが持つ初歩的な疑問の一つに、「そもそも自分は国民年金に入っていっているのだろうか?」というものがあります。
確かに給与明細を見ても、厚生年金保険料しか払っていないですから、そう思うのは当然かもしれません。
今でこそ、一般的なサラリーマンにとって、国民年金(1階)+厚生年金(2階)の2階建てになった年金ですが、もともとは全く別の年金制度だったことはご存じでしょうか?
分かりやすい様に、たとえ話にしますが、38年前の1986年まで、自営業者が入居する<国民年金荘>という平屋アパートと、サラリーマンが入居する<厚生年金荘>という平屋アパートは別々に運営されていました。
時代の変化と共に、<国民年金荘>の入居者である自営業者がどんどん減って、アパート経営が立ち行かなくなったので、<国民年金荘> の大家である国は大変困りました。
そこで、目を付けたのは、入居者がどんどん増えてお金があった<厚生年金荘>。
1986年に、国は<厚生年金荘>の入居者に向かって、「あなた達のアパートは実は平屋ではなくて、2階建てだったんです。1階は<国民年金荘>なので、あなたたちのお金は<国民年金荘>の住民ともシェアします。」と突然言い出しました。
当時お金がたくさんあった<厚生年金荘>の住民達は、自分たちが老後にもらえる年金も増えるので、文句を言う人はあまりいませんでした。
その後、2015年には、同じく入居者不足と放漫経営で資金難に陥った、公務員が入る<共済年金荘(2階部分)>も、<厚生年金荘(2階部分)>に統合され、救済されました。
あれから38年、かつては2階建てで恵まれていたため、入居待ちだった<厚生年金荘>も、人口減少と共に、入居者がどんどん減り、アパート経営は火の車です。
会社と折半というまやかしの元、賃料もどんどん上げてきましたが、入居者の負担ももう限界。
そこで、国が今やっているのは、平屋で賃料の安い<国民年金荘>の住民を、賃料の高い<厚生年金荘>へと半ば強制的に入居させること(=厚生年金の加入対象者の拡大※)です。
38年前に救済した<国民年金荘>の住民が、今度は逆に<厚生年金荘>の住民を助けることとなりました。
以上、たとえ話で日本の年金制度の歴史を振り返りましたが、誰でもわかる理屈として、<賃料を払う入居者(国民)がいないとアパート経営(年金制度)は成り立たない>ということです。
我々団塊ジュニアの世代が、<国民年金荘>や<厚生年金荘>の賃料を払わなくなる2040年、どんなアパート経営になっているのか、不安と期待が入り混じった気持ちで見守っています。
※厚生年金の加入対象者の拡大については、こちらの記事を併せてぜひお読みください。
