【相続登記】捨てるゴミに名前を書かせたいなら

こんにちわ。FPの金蔵(きんぞう)です。
来月4月1日から、相続した不動産の名義変更を行う相続登記が義務化されます。
全国で所有者不明の土地があまりにも増えすぎて、ついに国も重い腰を上げたようです。
以前のブログ*で取り上げた通り、現在の不動産登記制度は、不動産は値上がりするもの、価値のあるものであることを前提に作られており、人口減で地方の不動産がゴミ化する中で、早晩破綻するでしょう。
いくら10万円程度の罰金を科したところで、誰も駅のゴミ箱に捨てる空き缶にわざわざ名前は書きません。
登記にたくさんの提出書類や高い登録免許税が必要となるなら、なおさらです。
今回、国は過料という罰則強化で、相続登記を推し進めようとしていますが、もっと他にうまい手があるのではないでしょうか?
現在、日本には不動産の取引に関して税制面での優遇措置が多数設けられています。
皆さんに馴染みがある、マイホームを買った際の住宅ローン控除はその一つです。
その他、居住用財産の譲渡益に対する3千万円の特別控除など、そのほとんどが、不動産の値上がりを大前提に、不動産を処分して得た利益に関する減税措置です。
しかし、今後は、不動産の<値下がり>を前提に、負動産を処理して出た損失に対する優遇措置が、所有者不明の土地をなくすために、必要となってくるのではないでしょうか?
具体的には、相続した田舎の空き家や土地をきちんと登記変更して、格安譲渡した場合、その損失額を所得税から控除できる損益通算の仕組みです。
現在既に住宅ローンを組んで購入した不動産の譲渡損失に関しては、給与所得など、他の所得と損益通算できる仕組みがありますが、それを相続した負動産にまで対象を広げればいいだけです。
更に、単年で控除しきれない譲渡損失が出た場合、翌年度以降、無制限に損失を持ち越して控除できる仕組みにすれば、負動産を処理する強力なインセンティブになります。
昨年4月から、相続した不要な土地を、国に引き取ってもらえる相続土地国庫帰属制度が始まりましたが、条件が厳しい上に、費用がかかるため、それほど普及していない様子です。
「北風と太陽」ではないですが、ある一定の方向に国民を誘導したいなら、罰則ばかりではなく、経済的なインセンティブが必須です。
縦割り行政の中、法務省と財務省との省庁を超えた連携が必要となりますが、同じく田舎に空き家を抱える身としては、抜本的な解決策を切望しています。
*24年2月1日 『不動産登記の限界』
